

今でこそ、街を歩けば、サイン、ショーウィンドウはもとより、ビル工事の仮囲い、車両のボディに至るまで、あらゆる場所でシート素材が活躍するようになりましたが、
開発当時、塗料を筆で塗る職人芸の世界から、貼る作業への転換はなかなか受け入れられませんでした。しかしながら、高度成長の時代背景の中で、業界の深刻な技術者不足への対応のためには、思い切った技術革新が必要不可欠だと考えていました。
貼る素材の魅力は、手軽に切って貼り、また剥がす事も出来るスピード感と便利さです。季節折々に移り変わるディスプレイ業界の仕事の中で、季節感やイベントにタイミング良く対応出来る便利さから、この素材は、開発から40年余りでこの世界の主流に育ちました。
しかし、当時、色の素材を通じての社会貢献を願っている私たちにとって、一つ気になることがありました。手軽に貼るだけで景観を変えることの出来るこの素材には、色公害の危険性があるということです。私たちは、この素材を正しく使っていただくためには、良いデザインに向けての積極的な普及活動が必要と考え、時のデザイン界のリーダー勝見勝氏にディレクションをお願いし、1982年にCSデザイン賞をスタートしました。
現在、都市景観の中にしっかりと根付いているこのシート素材を見る時、26年間に亘るこのデザイン賞が、その使命を果たしていると実感しています。
ところで、シート素材は、塗料のように現場で混ぜて新しい色が作れません。色を無数に持つ事が出来ないので、当初から使い易い色の研究が、素材普及の生命線でした。そして1995年、長い研究期間を経て、財団法人日本色彩研究所の協力で、世界でもトップレベルの色票を作り上げました。この“NOCS2500”と呼ばれる3000色余りの色のシステムは、全製品の基準になるもので、そのために、当社の全ての製品は一貫性を持つ色揃えになっています。
貼る素材の可能性を追求する中で、今、中川ケミカルは2つの挑戦をしています。1つは、本物の鉄や銅をフィルム化し、赤や緑の錆を楽しめる素材“スーパーマテリオ”シリーズです。褪色する事が常識の色の世界で、時間と共に美しく成長して行く本物の錆の素材をつくっています。
もう1つは、透明色をかさねることで、色をつくることが出来る“IROMIZU”シリーズです。先述した色票“NOCS2500”から正確に12色相と白・黒をピックアップし、更に各色の濃淡をそれぞれ100%・50%・25%にし、合計42色をガラスに重ねることで予め計算出来る何千色もの組み合わせを現場で可能にした夢の多い試みです。
もともとシート素材は、ガラスとの相性が抜群で、反射光だけでなく透過光の美しさも考えて設計されており、光をコントロールした3次元空間の演出は、最も得意とするところです。近年のガラスが多用された大型建築でも大変活躍の場が大きな素材と思われます。
これからも積極的に夢のある新素材の開発に取り組んで行きたいと考えています。
ご期待ください。
中川ケミカル 代表取締役
中川幸也